脱線せぬよう    教会長

 名張市民に欠かせない近鉄大阪線は、比較的自然災害には強いのですが、2つの意外な理由で運行を見合わせることがあります。
 一つ目は「シカ」との衝突です。桜井駅を過ぎ、山深い場所を電車が走りますが、夜間、野生のシカが餌を探してか、線路を横切ることがあり、電車と接触することがあります。私が乗っていた電車も二度衝突したことがありますし、前を走っている電車が衝突して、後続電車が止められるということは、何度もあります。
 シカが車体の下に巻き込まれることが多く、安全が確認されるまで電車が止まります。シカも災難です。

 もう一つの理由は、晩秋が近づく雨の日に起こるのですが、桜井駅から榛原駅にかけて、電車は急勾配を登ります。ある日、急に電車が速度を落とし、駅でもない場所で停車しました。「信号待ち」かなと思いましたら、「ただいま、線路上の落ち葉を踏んで、車輪が空転したため、電車の運転を見合わせております」との車内放送。びっくりしました。この文明の進んだ世の中で、電車が落ち葉で止まるのかと…。線路上の落ち葉を踏むと、落ち葉から脂分が出て、線路の上で車輪が滑るそうです。その対処法は、なんと!砂を蒔くということです。
 レールの上を走るだけで、簡単安全と思っていても、思わぬことが起きるものです。

 亡き父は復員後、半年間名張教会に下宿し、伊勢の大学へ通いました。私も半年間、名張から京都の大学へ通いました。父はその後、道の教師にならせていただいて後、浪花女子高校で教員となり、その後八尾市内の府立高校で、勤めました。私も教師のご用についてから、浪花女子から、金光八尾でご用をいただきました。そう考えると、私は父のレールの後を走っているのかなと思わせられました。しかし、このレールは父が敷いたものではない。神様が敷かれたレールで、目には見えないけど、そこを走らせてもらっている私がいるということに気づきました。

 レールの上だからといって、順風満帆に走れるということはありません。風雨や地震にも遭うでしょうし、落ち葉を踏んだりシカと衝突したりするようなこともあります。実際、何度も止まり、また脱線しそうになったりしたこともあります。しかし、幸い脱線なく来ています。これからもレールから外れることなく、走ってゆきたいと思います。神様が敷いたレールは、「人の助かり」を願える、また実現することができるという目的地があると信じています。神様のレールの上を、嬉しく楽しく、ありがたく遊ばせていただくような心で、これからもおかげをこうむって参りたいと思います。



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